飲んだら飛ばすな!ドローンの飲酒運転が禁止になる本当の理由
「ドローン、飲酒操縦禁止へ」
2019年1月22日、国土交通省を取材した様々な報道機関がそのようなニュースを取り上げました。
1月31日現在では、日本ではまだ法改正はされていません。しかし、同省によればドローンの飛行が拡大していることを踏まえ、安全確保策のルール作りを急ぐ必要がある、とのことです。
では、ここにきてなぜドローンの飲酒運転が禁止されることになったのでしょう。
本当の理由は何なのか、具体的に一緒に考えてみましょう!
目次
- 自由の国アメリカでの、ドローンの飲酒運転は?
1-1.ホワイトハウスでの墜落事件
1-2.FAA(米国連邦航空局)のガイドライン
1-3.ニュージャージー州での立法 - 日本での、ドローンの飲酒運転は?
2-1.見通し
2-2.日本航空と全日空の飲酒トラブル
2-3.ドローンと飛行機の関係 - まとめ
1.自由の国アメリカでの、ドローンの飲酒運転は?
1-1.ホワイトハウスでの墜落事件
2015年1月26日午前3時8分、ホワイトハウスの警備にあたっていたシークレットサービスの一員が、敷地内にて約60cmのクアッドコプターが低空飛行しているところを発見します。事態を受け、ホワイトハウスはすぐさま警備体制を強化。この機体に危害を及ぼす危険性がないことを確認するまで、建物を完全に封鎖します。
その後、当該クアッドコプターは墜落したらしく、敷地の南側で発見されます。当局が公表した写真から、その機体が「DJI Phantom 2」であったことが判明しています。
騒動の当時、オバマ大統領とミシェル夫人はインド外遊中のために不在でした。また、2人の娘も祖母の家に出かけていたため、要人の身に被害はありませんでした。しかし、緊急事態を受けて当局ではただちに捜査を開始。事態の解明を急ぐこととなるのですが、事件発生から約6時間後の午前9時30分ごろのことです。シークレットサービスのオフィスに一本の電話が入りました。電話をかけてきたのは、組織に所属するエージェントの1人。そして、その男は事件当時、非常に酒に酔っていて、友人が所有するDJI Phantom2をホワイトハウスのすぐ近くにあるマンションから操縦していたところ、コントロールを失って墜落させてしまった、と自供します(セキュリティ上の理由か、事件を起こした職員の氏名や役職、そして処罰の有無やその内容は公表されていません)。
いずれにせよ、ホワイトハウス周辺には防衛用のレーダー網が張り巡らされているのですが、これはあくまでもミサイルや航空機のような物体に対するものであり、近年になって急激に利用が拡大しているドローンなどには対応できていないことが浮き彫りになりました。
また、社会が追いついていないという事実も鮮明となりました。
1-2.FAA(米国連邦航空局)のガイドライン
アメリカでは、外国人がドローンを飛行させる際には機体の登録が必要ですが、アメリカ国民または永住権を持っている人は、基本的には誰でも自由に飛ばせます。
とはいえ、もちろん最低限のルールはあるわけで、FAA(米国連邦航空局)は安全ガイドラインを設けています。
- 120メートルより下で飛ばすこと
- 目視の範囲内で飛ばすこと
- 他のドローンや航空機、空港近くでの飛行禁止
- 人が集まっている場所での飛行禁止
- スポーツイベントや球場などでの飛行禁止
- 火災が発生している近くでの飛行禁止
そして、飲酒に関してのルールも設けています。
パイロットや事業用ドローンの運用は、飛行の8時間前までには飲酒をやめること。
このように、FAAはしっかりとガイドラインは設けています。しかしホワイトハウスでの事件を受け、各州は法整備の必要性を実感。そして、ニュージャージー州を筆頭にFAAの規制を超えた立法が始まります。
1-3.ニュージャージー州での立法
2018年1月15日、ニュージャージー州でドローンの飲酒運転を禁止する法律が施行されました。
新法の下では、アルコールの影響下や麻薬効果、幻覚誘発効果、習慣性のある医薬品の影響下にある状態、または血中アルコール濃度が0.08%以上でドローンを操縦することが違法となりました。そして、違反した場合は最高で禁錮6月、罰金1000ドル(約11万円)が科せられるようになりました。
しかし、こんな常識的な法律に対し、実は反対意見が全くなかったわけではありません。むしろ不思議なことに、今なおこの法案に賛成しかねる人が一定数存在するのです。
トランプ大統領は可視範囲外でのドローン操作を合法にしようとしています。そして、大統領の考えを支持する人たちは、今回の「ドローン飲酒運転禁止」法案に対し、批判的な立場を取る人が多数います。ドローンは新しい可能性を秘めた技術です。そのため、厳しすぎる規制の中では成長や発展のスピードの遅れが懸念されるからです。
実際、2019年1月14日、アメリカ連邦政府はこれまで禁止されていた民間のドローンによる人の頭上での飛行、及び届け出なしの夜間飛行を許可するという新しい規制案を発表しました。現状では、FAAはドローンが墜落して人々に怪我をさせることを懸念し、民間のドローンが人の頭上を飛行することを禁止しています。が、この禁止により、建設予定地の調査や商品の配達、テレビ局による都市部の撮影など、様々なシーンでの商業用ドローン運用が困難になっています。そのため、革新的なドローンの商業利用を加速させるため、この法案の成立を目指しています。
テクノロジー業界をリードするアメリカの立場を、より強固に。
そうした事情が優先される風潮がアメリカにはあるのです。
2.日本での、ドローンの飲酒運転は?
2-1.見通し
2019年1月22日、各報道機関は国土交通省が飲酒をした場合のドローンの操縦を禁じる方向で検討している旨を報じました。
国交省によると、ドローンの墜落や紛失などのトラブルは非常に多く、2017年度では全国で63件、2018年度でも40件を越す頻度で発生しているそうです。また、2017年11月には岐阜県大垣市のイベント会場にて、墜落事故により複数の観客が軽傷を負っています。
今のところ、日本では飲酒が原因の事故・トラブルは確認されていないようですがないが、現行の航空法(2015年の改正航空法)にはドローン操縦において飲酒を規制する規定はありません。現在は、住宅密集地や空港周辺など飛行禁止区域を設け、そのような場所でドローンを飛ばす際には国交省の許可や承認が必要とはなりましたが、飲酒に関する規制は一切ないのです。そのため、同省はドローンの飛行が拡大していることを踏まえ、安全確保策のルール作りを急いでおり、法改正も視野に入れています。
しかし、理由はそれだけではありません。
飲酒を巡る不祥事が、大手航空会社で相次いだことが関係します。
2-2.日本航空と全日空の飲酒トラブル
2018年11月16日午前10時過ぎ、JAL(日本航空)とANA(全日空)の幹部がわずか15分違いで国土交通省の同じ部屋を訪れました。そして、両者は相次ぐ「飲酒トラブル」を謝罪しました。
日本航空は10月28日、ロンドン発羽田行きの便に乗務予定だった副操縦士がイギリス警察に逮捕されました。
日本航空は乗務員に対する飲酒のチェックを独自に行っていますが、副操縦士はその検査はクリアします。しかし、航空機へ送迎するバスの運転手がアルコールのにおいに気付いたため、保安担当者にその旨を伝え、警察に通報。その後、警察が改めて検査したところ、アルコールが検出されました。(ちなみに、イギリスでは1リットルあたり200mgのアルコール血中濃度を規定値としていますが、この副操縦士から検出されたアルコールは規定値の9倍以上の1890mgでした。)
一方、全日空は2018年10月25日、傘下で地方路線を担うANAウイングス(AKX/EH)の機長が体調を崩し、25日に予定されていた5便を遅延させました。問題は、機長が体調不良を起こした原因でした。機長は乗務前夜の10月24日午後10時ごろまで、滞在先の沖縄県石垣市内で飲食。その際に飲みすぎたため、翌25日には二日酔いを起こしてしまい、パイロットの交代が発生。機長が乗務予定だった石垣午前8時10分発那覇行きNH1762便(ボーイング737-500型機、登録番号JA300K)の出発が54分遅れ、計5便に各便1時間弱ずつの遅延が発生し、合わせて乗客619人に影響するという事態を招いてしまいました。
JALとANAの2社が、16日にともに再発防止策などを提出し謝罪したのはそのためです。
なお、現状では航空会社のアルコール検査方法にはばらつきがあります。日本では国により「乗務開始前8時間以内の飲酒は禁止」との規定はありますが、検査についての義務はなく、また、アルコール濃度についても明確な基準値が存在しないためです。ですから、国土交通省としては諸外国の基準を踏まえ、その強化を図ろうとしているのです。
2-3.ドローンと飛行機の関係
では、なぜ航空会社の不祥事がドローンに関係するのでしょう。
それは、ドローンも飛行機も、航空法により様々なルールが規定されているからです。そのため、航空会社がトラブルを起こせば、ドローンでも同じことが起きうると想定できるため、今回のようにドローンの飲酒運転に関する明文化への流れとなりました。
今、空の安全を守るルールづくりが本当に求められています。飛行機もドローンも、墜落すれば大きな事故へとつながります。そして、空の安全に対するルールがしっかりできていないことが航空会社により露呈したため、ドローンの規制も高めようという動きになりました。
これが、ドローンの飲酒運転禁止の背景にある事実です。
3.まとめ
急速に利用が拡大しているドローン。しかし、その拡大が予想以上に速いため、社会が付いて行かれないのが現状です。そしてそんな中、ドローンと同じく航空法により様々な規定がなされている航空業界にて、飲酒をめぐるトラブルが相次ぎます。ですから、普及が進むドローンでも墜落事故防止などの観点から規制が必要と判断され、このたびドローンの飲酒運転禁止法案が提出されました。
まだ罰則等の規定にまで議論は及んでいませんが、飲酒が冷静な判断能力を奪うのは周知の通りです。まだ法律違反ではないから。そんな気持ちでドローンを飛ばすのは絶対にやめましょう。
飲んだら飛ばすな。
法の成立に関係なく、皆さんが正しくドローンを活用されることを心より信じております!